★ アスタロトの再登場

 第三部の制作秘話で、「アスタロトを出そうと思
ったけどやめた」と書きました。そして、このメキシ
コ編でようやく再登場を遂げたわけですが、今とな
ってはあの時に出さなくて良かったなと心から思っ
てます。
 もともと、ルシファーがリリスの死に打ちのめさ
るというのは当初から決まっていたのですが、実
際にメキシコ編を始めるにあたり、さすがに人間
になったルシファーが一人で勝手に立ち直るの
は無理があるだろうと。
 そこで、誰か寄り添う存在が必要だと考え、白
羽の矢が立ったのがアスタロトでした。かつての
ベルゼブブのような役割を担えるのは、沈着冷静
で変に仲間と馴れ合ったりしない彼しかいない。
 そして、いざ登場させてみると、内には女神アス
タルテが眠っているという事で、受肉の身でありな
がら神々と対等に戦えたり、アスタルテが結果的
にルシファーを目覚めさせたり、妹のアナトとの確
執が生まれたりと、良い感じでドラマもたくさん生
まれました。いやあ、本当にあの時に出さなくて
良かったです。

 
 

★ 肉体派は挿絵多し

 毎回、「最低2枚」という作者ルールで頭を悩ま
す挿絵ですが、今回はアナトとホルス、そして新キ
ャラのユム・カーシュの挿絵を描く事になりました。
  そこで、ふとアナトとホルスの挿絵を描く事が多
いなと気付いたのですが、理由はおそらく、彼らが
肉体メインの戦いをするキャラだからでしょう。
 例えば、ルシファーやベリアルのように光線や衝
撃波を使うタイプだと、本人はポーズを取って突っ
立ってるだけでも、バックに流線を走らすだけで何
となく表現できてしまいます。
 しかし、アナトやホルスのように、敵の奇妙な攻
撃に身体一つで対応しようとすると、いろいろ動き
回る事になるので、文字や流線だけではうまく表
現する事ができません。というわけで、どうしても
彼らの挿絵が多くなってしまうんだと思います。
 決して、作者があの二人をお気に入りだからと
か、そういう事ではないのです。

★ 生贄の解釈

 キリスト教国による一方的な異教狩り。それに反
発する形で始めたこのメキシコ編でしたが、生贄の
風習に関しては、資料を読めば読むほど、肯定的
に解釈する事が難しくなりました。
 本編でも触れましたが、生贄の血は太陽を動か
す原動力になるとか、太陽生成時に神が犠牲にな
ったから、人間も犠牲にならなきゃいけないとか、
その理由や起源については神話的にいろいろな
説明がありました。ただ、太陽は世界共通で一つ
だけなので、これらの説を採用してしまうと他の
地域の世界観と矛盾してしまいます。
 そこで、この作品では、生贄は神々が要求した
のではなく、人間たちが自分たちの提供し得る最
大の犠牲として人間を差し出した、という解釈で
描く事にしました。あくまでも、神々に責任はない
というスタンスです。
 ちなみに、ケツァルコアトルが生贄に反対してい
たという話は、実際に言い伝えとしてあったようで
す。ただ、作者が現地で購入したマヤの神々の小
冊子には、ククルカン(ケツァルコアトル)が生贄の
風習をマヤにもたらしたとも書いてあったので、こ
の辺りは諸説あるんだと思います。
 とはいえ、概してケツァルコアトルは善神として
崇められていたようです。